★ 花火は三つ ★
<オープニング>

「どうしよう……」
 ヒオウは途方にくれて、けれど歩いていた。なるべく人の少ないところ、人の少ないところを探して。
 細いウエストには、十数本のダイナマイトがぐるりと巻き付けられている。それぞれから伸びる導火線は一つに絡み合い、ヒオウの手の中の時限装置へとつながっている。
 時計の残り時間は三十分を切っていた。



 そもそもの始まりは数日前、学校からの帰り道だった。
 正規のルートより五分は時間が短縮できるので、近所の公園をつっきっていた。時刻は夕暮れ、じきに夜になる。小走りに帰路を急いでいると、何かが視界の端をかすめていった。
「――?」
 なんとはなしに、目を向ける。
 か弱い街灯の下、ベンチに男が座っていた。パンくずでも撒いたのか、鳩が足元や彼の体に群れている。少し寂しげな目をした、無精ひげの目立つ男だった。たぶん若いのだろう。けれどくたびれている。
 目が合うと、男はハイ、と手を挙げた。腕にとまっていた鳩が慌てふためいて羽ばたく。
 人なつこい笑みに、ヒオウの警戒心が薄れる。元来社交的な彼女のこと、歩み寄って声をかけた。
「何をしているの?」
「今の行動は餌付けだね。そして、人生において何をしているかといえば休憩と思考さ」
「そう」
 とは答えたものの、哲学的すぎてよくわからなかった。
「座ってもいいかしら?」
「どうぞ、レイディ」
 とすん、と隣に腰を下ろす。
 それから、他愛もない世間話をした。彼の持っている雰囲気は、病院で刻々と死を待っていた緋桜に似ていた。ともすれば終わってしまいそうな命の灯火、それ吹き消されるのはそう遠くない未来だろうと思わせるような儚さだった。
 すっかり暗くなるまで話し込み、夕飯の時間を思い出して慌てて別れを告げた。
 少し気を配れば、彼が銀幕市中に指名手配されている爆弾魔、ミハエル・スミスだとわかった。
 けれど、ヒオウは警察には行かなかった。人殺しの持つ後ろ暗さを感じなかったからだ。だから事実を知った後も、きっと冤罪か何かで身を隠しているのだと期待した。
 悪い人に見えなかったから、それからも通って話をした。昼間も閑散としている寂れた場所のせいか、ミハエルは他の誰かに見つかる様子もなかった。

「ヒオウ、目をつぶってくれるかい?」
 ミハエルが切り出したのは、緋桜のことを話題にした直後だった。いつになく、冷めた目をしていたのを覚えている。
 ヒオウは従った。熱が近づき、腰回りの重量が増える。そして、首に何かをかけられる。
「……もういいよ」
 まぶたを持ち上げる。己を見下ろすと、禍々しいまでの重りがまとわりついていた。
 ミハエルは相変わらず優しい笑みで、ヒオウの手を取った。親指を起爆スイッチに導く。
「君もムービースターだったんだね。ファッキンガッド、こうするしかないんだ」
「どういうことなの」
 ミハエルは答えない。笑っている。
「スイッチから指が離れると爆発する。時限式だから、離さなくても二時間後に爆発する。デリケートな子だから、他に妙な真似をすると何が起こるかわからない」
 ヒオウは青ざめ、口を開閉させた。ミハエルは続ける。
「今のうちに、誰かにお別れを言っておいで。それだけの余裕はあるから。グッバイ、レイディ」
 パニックを起こしかけたヒオウを残して、ミハエルは公園の雑木林に姿を消した。
 残されたヒオウは、裏切られた悲しさに歯を食いしばった。



「どうしたら、いいのかしら」
 泣きそうな声で呟くヒオウの首には、一枚の看板がぶら下がっている。

『親愛なる探偵および警察および強い好奇心をお持ちの諸君

 心優しき少女といえど、ムービースター。つまりはいずれフィルムに還元されるべき存在。人が塵に還元されるように。
 情を仇で返すのはしのびないが、矛盾した存在が闊歩する方が私には許し難い。そこで賭けをしてみることにした。
 誰かが彼女を救ったら、犠牲を出さずに事を解決させたら、私はまた表舞台に姿を現そう。相応の覚悟をしての行為だ、とは改めて書く必要もないとは思うが。
 彼女の罪は、実体化してしまったことだ。

                   ミハエル・スミス』

種別名シナリオ 管理番号124
クリエイター高村紀和子(wxwp1350)
クリエイターコメントお久しぶりです。花火の第三弾です。
誰かゲストを……と思ったら私のストックには緋桜とヒオウしかNPCがいず、新キャラとか一般人では何なので贄の羊として目を付けられた次第です。

ヒオウを助けてやってください、というのが今回のお願いです。導火線を切ったり時限装置に細工すると即座に爆発します(本人がふっとぶだけでなく、周囲にも被害が及びます)。
今年はアンチバッドエンドイヤーなので(今決めた)、求むハッピーエンド。
ちなみに、ミハエル自身はまだ銀幕市のどこかに潜伏中です。今回は出番がありません。
皆様のおかげで元気になった緋桜は、何も知らずに市内で普通の学生をやっています。もしご希望がありましたら顔を出す用意はあります。

参加者
鈴木 字楽(chyf8088) ムービーファン 男 27歳 同人作家
刀冴(cscd9567) ムービースター 男 35歳 将軍、剣士
冬月 真(cyaf7549) エキストラ 男 35歳 探偵
ヘンリー・ローズウッド(cxce4020) ムービースター 男 26歳 紳士強盗
<ノベル>


 夏が近づくと、夜も不愉快さを増す。昼の熱気がアスファルトに潜んでいて、時間と共に闇を生温く変えていく。
 ヒオウはなるべく人家のない方を目指していた。
 爆発物には詳しくないから、これだけの爆薬でどれだけの被害を生むのかは想像しかできない。最低でヒオウの腰回りを肉片にする程度――最高で、家を二、三軒吹き飛ばす程度、か。まさか、町内一帯を荒野にするほどはないだろう。さして力があるとも言えないヒオウが、固定されているとはいえ持ち運べる程度の重量だから。
 忌まわしいのに、ついつい手の中の時限装置へ目を落としてしまう。残りは二十七分と十六秒、十五秒、十四秒……。
 はたと我に返る。見つめて嘆くより、するべきことはまだある。
 顔を上げたヒオウは、街灯の下にたたずむ人影を見つけた。
 黒いスーツに黒いネクタイ。葬式を連想させたのは、そんな服装より彼の持つ雰囲気だった。手やシャツは白いのに、印象は闇だ。うつむき加減の顔には影が落ち、造作も判然としない。
 辛うじて、肩に乗ったバッキーで人間だとわかる。
「早く、逃げて! どこかへ行って!」
 ヒオウが叫ぶと、彼はついと前に出た。闇に混じる。
「……どうしてですか?」
 まるで生気を感じさせない声。ヒオウは呑まれそうになり、けれどなんとか踏みとどまった。
「見ての通り、わたしはもうすぐ、爆発するの。だから、安全な場所へ行って……ください」
 音程の狂った笑い声が返事だった。白い手がバッキーを撫でる。
「爆発……爆発だそうですよ、ペトルーシュカ。きっとあの子はミリ単位の肉片になってしまうのでしょうね。それとも、あのデフォルメされた容姿から推測するにムービースターでしょう。ということはムービーフィルムになるのでしょうかね。はてさて、飛び散ってどうやって一個の物体に戻るのでしょうか。興味深いですね」
「何……誰なの、あなた」
 恐怖に麻痺しだして、気がつけば尋ねていた。
「自分ですか? 鈴木字楽という寓話作家の一人ですよ」
 ヒオウはとっさに後ずさった。字楽はいつの間にか、目の前にいた。
「こ、これを読んでくれるかしら。わたし、殺されるの」
 看板を示す。高い位置にあった頭が板に近づき、舐めるように文字を追う。
「ミハエル・スミスですか。指名手配されてから活躍を聞きませんでしたが……ようやく次の事件を起こす気になったのですね」
「そうなの。だから、逃げて。字楽さんを、巻き込みたくないから」
 それでも動くそぶりはない。ヒオウは発想を転換した。
「それなら、動かないで。わたしがどこかへ行くから」
 命じるだけ命じて、ヒオウは早足で先を急いだ。杵間山が段々と近づいてきている。




「発見できず、か」
 冬月真は呟いて、本日の仕事を切り上げることにした。
 相変わらず大量に舞い込んでくる猫探しの依頼に、少し辟易している。一体、銀幕市には何千匹の飼い猫がいるのだろう。そして、一日に何百匹が迷子になっているのだろう。真が発見する数を一割とすると――銀幕市の全世帯で猫を飼っていてもおかしくない。
 いやいや、リピーターを数えるのを忘れていた。週に一回行方不明になる猫ばかりだと思えば、総数はぐっと減る。
 ため息をついて、草むらから脱出した。服についた葉っぱや種を適当に払い落とす。
 ざくざくと下生えを踏んで道路に出る。田畑やビニールハウスが連なるうら寂しい道に立つと、かすかな異音が耳に届いた。
「泣き声……?」
 普段なら聞き逃してしまうような、小さく遠い声だった。が、障害物がないのでここまで届く。
 発生源へ向かったのは、好奇心と少々のおせっかいからだった。
 青々とした稲の茂みを背に、少女が座り込んでいた。先日の記憶が鮮やかによみがえる。
「どうした緋桜……!?」
 顔を上げた彼女に、何とはなしに違和感を抱いた。が、それは些細な注意点でしかない。もっと驚くべきことがあった。
 筒状の物体がぐるりと胴を取り囲み、一本一本から導線が伸びて手の中のスイッチにつながっている。
 膝を抱えていた彼女は、うつろな目で真を見る。
「緋桜の、知り合い?」
「ああ、冬月真だ」
 少しだけ、笑みが生まれる。
「緋桜を助けてくださった人ね。話は聞いているわ。わたしは小山ヒオウ。はじめまして、そしてさようなら」
「何があった?」
 ヒオウは片手で、背後に回していた看板を見せた。
 読み進むうちに、真は抑えようのない感情がほとばしるのを感じた。
「ふざけたことを……」
「だからね、わたし、もうすぐ死ぬの。巻き込みたくないから、逃げて」
 痛々しい空元気。
 真は爆破装置をじっくり観察した。褒めたくはないが、プロが作っただけあって完成度が高い。知識をかじった程度では、太刀打ちするどころかヒオウを犠牲にしてしまう。
 今すぐ爆弾処理班を呼んでも、到着が間に合うかどうか。そして、処理が時間内に終わるか。爆弾魔の再デビュー作だ、丹誠こめて作られていることは間違いない。挑発的なメッセージも、絶対の自信からだろう。
 葛藤は、そう長くなかった。導火線に手を伸ばす。
 ヒオウは尻をずらして、距離を空けた。
「何して……るの? わかったでしょう? もうすぐ爆発するの」
「安心しろ。何とかする……いや、してみせる」
 演技はうまくないから、見抜かれただろう。嘘と言うには真剣すぎるが、張りぼての自信からの言葉であることを。
 みるみる眉尻が下がるヒオウをなぐさめるように、頭を乱暴に撫でる。
「こんなおっさんで申し訳ないが、最後まで付き合ってやる」
 例えそれが、花と散ったとしても……。




 時計は無情にカウントダウンしていく。十三分と五十五秒、五十四秒……。
 額に汗を浮かべて四苦八苦する真を、ヒオウはじっと見守っていた。たまに交わされる言葉は平行線のまま、最後はヒオウが諦める結果に落ち着いていた。
 星空を見上げて、ヒオウはここにいない相手に話しかけた。
「ミハエル、ねえ、聞いて。ムービースターだとか普通の人間だとか、関係ないわ。どんな出自でも人は人よ。怒って笑って涙する、人。何の違いがあるの?」
「同感だぜ、緋桜」
 第三者の登場に、ヒオウは危うく装置を取り落とすところだった。
 明らかにムービースターとわかる、迫力のある美形だった。
「わたしは、ヒオウの方なの。あなたは?」
「俺は刀冴、緋桜とちょっとした知り合いだ」
「お名前だけは、緋桜から聞いて――」
 そこで、ヒオウは我に返る。
「悠長に話をしている余裕はないの。わたしは」
「見ればわかるし、聞こえてたさ。真とずっと話してただろ?」
 ヒオウはきょとんとする。真がこれだからムービースターは、と言わんばかりに右手で顔を覆う。
「聞こえて……いた? だって、見渡す限り、冬月さんしかいなかったのよ?」
「家が近くにあってな、表が騒がしいから耳を澄ませたら聞こえた」
 天人と呼ばれる、人間をはるかに超越した種族だから可能な所業だ。
 いいか? と刀冴は手を伸ばし、看板を読む。
「卑怯な方法でしか自己主張できないテロリストが、なりふり構わず……って雰囲気だな」
 どこか哀しげに呟いて、看板を奪うとひと思いに破った。そして、全力で投げ捨てる。
「悪い奴には見えなかったが、間違ったんだな、どこかで。誰かが注意してやれば、ここまでひどいことには……。気づかなかった俺も、馬鹿だったな。あの時に殴ってでも大人しくさせて、説教してれば……」
「仮定の上に成り立つ未来を求めるのは、無駄だ」
 真が静かに、きっぱりと言い切った。
「未来は、現在の先にしかない。だから、反省したら前を見るんだ」
「……そうだな」
 刀冴は表情を引き締めた。
「あー、ぐだぐだ悩むなんざ柄じゃねえ。死にたくなるからあんまり使いたくねぇんだけど、助けるからな、ヒオウ」
 にかっと笑い、刀冴はロケーションエリアを展開させ――ようとした時。
「待ちたまえ!」
 夜の田んぼに、朗々とした声が響いた。




 灰色のスーツ、シルクハット、ステッキと聞かされればマジシャンを想像するだろう。だが実際は、銀幕市外では絶滅危惧種に指定された紳士だった。
 と言っても若い。どう多く見積もっても三十には届かないだろう。端正な美貌に人当たりのよい笑みを浮かべて、彼はヒオウのところへやって来た。
「初めまして、レディ。僕はヘンリー・ローズウッド。『探偵』さ」
 大袈裟に膝を折って名乗りを上げ、おまけにウィンクまでついてくる。
「はじめ……まして、あの……」
 説明しかけた唇を、ヘンリーの人差し指がやんわりと止める。そして、刀冴が投げ捨てた看板をトランプカードのように披露した。
「探偵だからね、これとレディを見て事情はわかったよ。ミハエル・スミスも安っぽい真似をするものだね」
「安っぽい、だって……!」
 あまりの言い様に、刀冴は拳を握り締める。
 真は皮肉げにダイナマイトを示した。
「人の命がかかっているのに、随分と過小評価するな」
「わたしの命はどうでもいいから。みんな、逃げて」
 ヒオウが懇願する。ヘンリーは板片を放り捨て、時限装置のタイマーを確認した。もう、爆発まで五分もない。
 ヘンリーは顎に手を当て、考え込んだ。
「明言したからには現れるだろうしねぇ、この手のタイプは。……では、イッツ・ショータイム」
 ぱちり、と指を鳴らすと、辺りに霧が立ちこめた。漂うつれない空気が、ロケーションエリアであることを教えてくれる。
 穏やかなのに猛禽類を連想させる笑顔で、ヘンリーは黒い絹の布を取り出した。大きい。
「タネも仕掛けも御座いません」
 客に布の裏表を見せる。刀冴がぼやいた。
「探偵じゃねぇのかよ」
「探偵だよ。だけど、ムービースターでもあるんだ。不条理を不条理で解決できる、ね」
 布を、座ったままのヒオウにかぶせる。真はヘンリーを睨む。
「何を――」
「だから、ショータイム。さあ数えて、ワン・ツー・スリー」
 飄々とした態度のまま、指を鳴らした。さえぎるもののない空間に、広がる。
 そして黒布を取り除くと。
「「ヒオウ!」」
 真と刀冴は歓声を上げた。
 きょとんとした少女の膝の上に、ダイナマイトは積み上げられていた。……腰から離れて。
「あ……」
 一拍遅れて、ヒオウも自分の身に起きた事に気づく。
「はいこれ」
 感動のシーンに突入する前に、ヘンリーは素早く真の手を取った。
「……ん?」
 握らされたのは起爆装置。そして親指はスイッチに乗っている。
「何してるんだい、どうにかしてくれないか? 爆発してしまう。周囲二十メートルは瓦礫の山になるよ?」
 当然のように、迷惑そうに、ヘンリーは肩をすくめる。
 残り時間は二分と二十一秒。真は音を立てて血の気が引いていくのを感じた。
「これだから、ムービースターって奴は……!」
 迷っている余裕はない。真はダイナマイトの束を小脇に抱え、ヒオウから遠ざかるために走った。走った。人生で一、二を争うぐらい真剣に、走った。
「待てって!」
 刀冴が後を追う。銀幕市から出ることができるなら、オリンピックで金メダルを量産すること間違いなしな身体能力だから、あっさり並ぶことができた。
 腕を掴んで真を止めると、刀冴は小規模な結界を張った。その中に、ダイナマイトを封じる。
「落ち着けって。時限装置の解除ってのはわからんが、こういうのは出来る」
「……まったく、ムービースターってのは」
 真は脱力した、刀冴は男前な、それぞれ笑みを交わした。
 ……二、一、ゼロ。




 爆発音は結界に遮られて聞こえなかったが、霧の向こうに一瞬の光が見えた。
 ヘンリーがヒオウに手を差し出す。
「レディが直土の上に座っているのは、美しくないよ」
「あ……そうね」
 少し赤面して、手を借りる。
「そして、このような時間にレディの一人歩きは危険だよ。途中まで護衛させてくれるかい?」
「ううん、それはいいわ。ありがとう」
 それから、ヒオウは深々と頭を下げた。
「ありがとう。わたし、まだ生きていられるわ」
「どういたしまして」
「冬月さんも刀冴さんも、あーりーがーとー!」
 去っていった方角へ、腹の底から声を張り上げる。どういたしまして、とかそんな内容の、返事が聞こえた気がした。
 ヒオウはヘンリーに向き直る。
「何かお礼をしたいわ。どこへ行ったら会えるのかしら。住所は?」
「そんなもの、いいよ」
 ミハエルをあぶり出すことが出来たし――と続いたのは、ヒオウには聞こえなかった。
「それなら、また会った時に何かをさせてもらうわ」
「また会った時、ね。楽しみにしているよ。おやすみ、レディ」
「おやすみなさい、さようなら」
 ヒオウは軽やかに、家路についた。
 人家も街灯もまばらな道を、行きとは違って軽やかに通り過ぎる。
 鼻歌でも歌いたくなった。が、思った矢先に高揚した気分は沈んだ。
「またお会いしましたね。どちらへ行ったのかと気になっていたのですよ」
 霧の合間から、唐突に字楽が姿を現した。ヒオウをじっくり観察し、呟く。
「爆発しなかったのですね……残念です。ですが、次が起こる」
 彼は笑った。心底おかしくて楽しくてたまらない思いを、ストレートに乗せて。
「あなた……」
 ヒオウは弧を描くように字楽を避け、逃げ去った。
 ミハエルより、怖かった。



 そして、最後の事件の幕が上がる。





To be continued...

クリエイターコメント第三弾、お楽しみいただけたら幸いです。
プレイング全てを生かし切ることができなくて、悔しいです。なるべく個性を生かす方向で頑張ってみました。

ずるずると続いてきたこのシリーズ、次の四つ目で終わりを告げます。
どんな路線にするか迷っていますが、まあ、皆様のプレイング次第ということで。
公開日時2007-05-29(火) 21:20
感想メールはこちらから